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2010年03月19日

●「障害者制度改革」埼玉セミナー第1回報告

2月13日「障害者制度改革」埼玉セミナー第1回報告

 昨年10月30日日比谷公園野外音楽堂で長妻厚生労働省大臣が「障害者自立支援法の廃止」を明言してから、4カ月がたった。「その後はどうなるのか?」これが私たちの大きな関心事だった。

 社団法人埼玉障害者自立生活協会と埼玉障害者市民ネットワークが共催した表記セミナーは、時宜を得て、朝霞市産業文化センター3階ホールは、身動きもままならないほど聴衆を集めた。参加者の耳目は尾上浩二氏(DPI事務局長)の講演に集中した。尾上さんは1月12日にスタートした「障害者制度改革推進会議」の障害者委員の一人で、いわば、時の人だ。

 尾上さんは生い立ちから話し始め、入所施設での小学生時代の体験が「脱施設」を主張する今につながり、また「設備改善要求するな、先生の手を借りるな、友達の手を借りるな」と念書を書かされて入学した中学校体験が「差別禁止法」を求める今につながっているとのことだった。

 続いて2006年12月国連総会で採択された障害者権利条約について説明。3条の一般的原則(障害者の権利と尊厳の保護、自律、非差別、完全参加、インクルージョン、差異の尊重、アクセスビリティなど)、19条の自立生活、地域社会での生活、24条の普通学校での教育などを紹介した。日本も2007年にこれに署名しており、今後その批准(国会で認めること)に向けて、権利条約の内容と整合するように関連国内法を改正する必要があり、その改正作業が制度改革推進会議の役割である。

 1月12日、1回目の改革推進会議で事務局長役の東俊裕氏(車椅子の弁護士)が出した論点表によれば、推進会議で議論することがらは、障害者基本法、虐待防止法、自立支援法、教育、雇用、交通と情報アクセス(使いやすさ)、精神医療、所得保障、予算の確保、「障害」の表記のありかたなどと広い範囲にわたっている。これを夏までに中間報告を出すというのだから、かなりのハードスケジュールだ。自立支援法については4月から部会で議論するそうだ。

 自立支援法に代わる法について。DPIでは数年前から勉強会を積み重ねており、総合福祉サービス法案というものを発表している。尾上さんが考えている改正のポイントは、

  1. 旧法は、「能力、適性に応じ自立する」と言うが、この裏には「能力、適性に応じ自立しない」ということも含まれている。この原則を、すべての障害者があらゆる場面で平等に暮らせるというものにしたい。
  2. 高次脳機能障害や発達障害や難病など障害者手帳がないから福祉サービスを受けられない「谷間」の人をなくす。
  3. どういう障害があるか(医学モデル)ではなく、どういう支援が必要か(社会モデル)で福祉サービスを提供できるようにする。そのため障害程度区分方式ではなく協議調整方式にし、本人中心にした計画(セルフケアマネジメント)ですすめる。
  4. 介護保険式の細切れサービスをまねたために重度者や見守りが必要な人たちが使いにくいものになっているので、これを連続性のある(切れ目のない)ものにする。
  5. 脱施設化をすすめる地域基盤整備を特別立法で行う。

などである。

最後に当面の緊急措置として次のようなことを考えているとのことだった。

  1. 4月から低所得世帯の利用料無料化
  2. 障害者手帳がなければ福祉サービスを受けられないという制約を緩める。
  3. 移動支援を行っている市町村の財源を確保する。

 休憩後、参加者側から、制度改革推進会議委員に埼玉の実情や要望を伝えるという趣旨で、職場参加ビューロー(越谷市・ともに働く)、吉井さん(吉見町・公立高校入学)、欠格条項を考える会(新座・普通学校入学)、とことこの家(所沢・生活サポート事業)、センター21(ふじみ野市・移動支援、グループホーム、地域活動支援センター)地域活動センターふらっと(新座・自立意識アンケート)、生活ホームもんてん(越谷・入居のいきさつ)などが発表した。