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2008年09月21日

●共同連全国大会に参加

 9月20日~21日まで、大阪府箕面市で開かれたNPO法人「共同連」の全国大会に参加してきた。

 共同連とは、全国各地の障害のある人とない人の「ともに生き・働く場」が集まり、当時の厚生省・労働省に対する共同行動を行うことを目的として結成された団体で、1984年に結成された。

 共同連とセンター21とのつながりは、くまのベイカーズ開設前に共同連主催のパン作り合宿や、共同連の事務局長の斎藤氏が所属する「わっぱの会」へ泊まり込みでの研修などでお世話になったほか、共同連全国大会を埼玉で開催する際に、センター21から実行委員2名をだし、また、現地の連絡担当者の宿泊先として、みどり荘を提供したりするなどの、つながりがこれまでにあった。

 今回は事務局長の斎藤さんからのお声掛けで、くまのベイカーズとPGSJとの共同事業についての話をしてほしいとの依頼を受けての参加となった。

 大会の1日目は箕面市民会館にて、記念講演とシンポジウムが開かれた。 

記念講演は雑誌「そよ風のように街に出よう」編集長 河野秀忠さんの講演で、箕面市の障害者運動の歴史。箕面市障害者事業団ができた経緯や、箕面市独自の障害者事業所制度の成り立ちなどが話された。

箕面市との交渉の際、障害者事業団が財団法人になったのは、障害者の労働の問題を中心に話をしていたところ、市の担当者から「それなら社会福祉法人ではなく、財団法人としての話だね」と言うことで、財団法人としての障害者事業団が出来たという話はおもしろかった。

 また、その事業団を通じて行われる、箕面市独自の障害者雇用助成制度の話もされた。

 10年ほど前、箕面市で小規模作業所全国大会があったとき、その制度を使っているパン屋を見学したが、その制度は今も衰退することなく、箕面市の障害者雇用を推し進める原動力になっているようだった。

 箕面市障害者雇用助成金は、障害者を4人以上雇用し、かつ、雇用割合が30%を超える事業所に対して助成される。その助成金は3つの助成金によって構成されている。

①    障害者助成金:雇用された障害者の賃金に使う。(1人あたり年間約110万円)

②    援助者助成金:健常者の賃金に使う。(障害者3人に対し約1名。1人あたり年間約130万円)

③    作業設備等助成金:家賃や設備を整えるために使う。(年間192万円~700万円 雇用人数による)

福祉施設に対する一般的な補助には②や③のような性格の補助金はあるが、障害者本人に対する補助制度はない。そういった意味で画期的な制度である。

 もちろん、助成金だけの収入だけですべての賃金を賄うことは出来ないので、それぞれの事業所は独自の事業を行い、収益を上げる努力をしている。

 また、障害者の定義を手帳の有無にとらわれず、障害により社会的ハンディを負っているものを対象にしている点も、独自の制度である。

 そのほか、障害者自身が経営に参加することや障害者問題を含めた、人権・福祉問題の啓発活動を行う事なども、助成対象の条件となっている。

 記念講演の後にシンポジウムが開かれた。

シンポジストは、元環境事務次官の炭谷茂さん、(株)ナイス代表取締役の冨田一幸さん、フリーター全般労組副委員長・ニュースタート協会の梶屋大輔さん、豊能障害者労働センターの小谷麗子さんの4名。

コーディネーターは共同連事務局長の斎藤縣三さんで「ソーシャルインクルージョンと社会的事業所づくり」をテーマに行われた。

 豊能障害者労働センターで働く小谷さんからは聴覚障害を持ちながら、銀行やトラックの運転手など様々な職場での働いてきた経験の話、そしてそれぞれの場での働きづらさ、そして現在の豊能障害者労働センターでの働きなどについての話。

 梶谷大輔さんからはフリーターの労働組合とニートの人たちへの支援活動の内容についての話があった。フリーターなどへの支援の実際と、ニートの人たちの働くに着いての取り組み(訪問活動(レンタルお姉さん・お兄さん)、若衆宿、仕事体験塾など)の話があった。 この活動はまだ始まったばかりだが、今後どのように展開をしていくのか大変興味深い話だった。

 冨田一幸さんからは、事業組合を中心にした、様々な活動の話で、西成のホームレスの働く場作り(花屋さん、企業とNPOの共同事業体(公園で寝る人から公園で働く人へ))と知的障害者の雇用の場「大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合 エル・チャレンジ」などが話された。エル・チャレンジは大阪府内の社会福祉法人や株式会社など5団体で構成され、施設なき授産活動として、清掃事業を行っている。

 話の中で興味深かったのは、大阪府の清掃業務の入札制度が、障害者の雇用率が多いところが落札できるようなシステムを導入させたことがあった。

 入札に際し、入札金額にはあまり重点を置かず、障害者雇用の比率が多い企業が落札できるようなシステムなっており、障害者雇用が進むと同時に,入札価格の下落に歯止めがかかり、所得保証にもつながっているという入札制度だという。

この制度になってから、大阪府や大阪市の清掃業務に入札する企業の平均障害者雇用率は5%を超えているという。

ホームレスの支援団体や障害者団体だけではなく、別の世界のプロの人たちと力を合わせていき、事業を成立させていくそのアイデアとバイタリティーには感心させられた。

炭谷茂さんからは、ソーシャルインクルージョンの歴史的経過や、社会的事業所のあり方、ソーシャルインクルージョンの現在と今後の活動についての話があった。

ソーシャルインクルージョンとは、ホームレスや障害者など、社会的に排除されてきた人々の市民権を回復し、再び社会に内包し、社会の構成員として支えあることを目的としている。

その目的を実行するために、共同連や冨田氏などが実践している、障害者やホームレスなどの働く場作り(雇用の場)は、ソーシャルインクルージョンを推し進めるためには重要な社会的事業所になる。

ソーシャルインクルージョンの運動を広めるために炭谷氏は、ソーシャルインクルージョン・ジャパンを12月に設立し、エコマークやオーガニックマークなどと同様、ソーシャルインクルージョンのロゴマークを世間に広め、ソーシャルインクルージョンを目的とする団体の製品であることが社会的価値になるようにし、今後、社会的事業所を全国で2000社設立する事を目標とすると語られた。

社会的事業所は、利益を目的とするのではなく、たとえば障害者の雇用を目的としたり、環境問題へ寄与する事業であったり、これまでの競争社会での事業のあり方とは一線を画したものであり、また、福祉的就労の場とは違い、新しい形の働き方になり、「共に」という考えに基づき活動をしているセンター21の考えとも合致する。

この数年、障害者の働くための施策は一見進んでいるように見える。しかし、最近ニュースにも頻繁に取り上げられるようになった、非正規雇用やホームレス、準ホームレスの増加など、働くことを取り巻く環境は悪化しているように思う。

そんな中で、障害者のみに特化した、働く支援を考えていても、社会からは孤立した形で進行してしまうように感じていた。

 今回の話を聞き、社会的事業所が果たすべき役割は、障害者のみならず、世の中からその存在価値を低められている人たちの新しい働きの場になると同時に、一般企業の利益中心の働き方や福祉的就労での働き方とも違う、新しい価値に基づく働き方・生き方につながっていくのだろうと感じた。

2日目は会場を箕面観光ホテルに会場を移し、6つのテーマ(くらすこと・ともに働く場作り・共働事業所と一般就労支援・まなびそだつ・商売繁盛分科会・社会的観光「箕面北柴地域まちづくりフィールドワーク」に分かれて分科会が開かれた。

自分はその中の第5分科会「商売繁盛分科会」でPGSJとの共同事業についての報告を行った。

同じ分科会では、大牟田市の障害者団体の連絡会を中心にした、行政からの委託事業の話。

 箕面市の豊能障害者労働センターのリサイクルショップでの年間2000万円の売上を出している話。

 仙台市のはらから福祉会からは年間5億円近い売上をだす、豆腐などの販売のはなし。

 北海道のたつかーむでから卵などを中心とした、農作業による事業についての話がされた。

 この中で共通して話されていたのは、いずれの団体もいかにプロとしての仕事を行っていくかで、「ごっこの領域をどのように脱するか」と言う点が共通して話されていたと思う。

 同じ分科会で他の方の話を聞き、自分の努力の足りなさを痛感させられた。

 考えなければいけないことはたくさんあるし、考え続けなければと改めて感じさせられた。

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全体を通して

 この数年、さまざまな研修や大会などに参加しても、活を入れられたり、有益な情報を得られる会に出くわすことは、そう多くはなかった。

 そんな中、共同連の大会は関西が中心とはいえ、全国から様々な活動をしている人が集まり、ともに働く、ともにくらすといった、センター21の基本的理念に則した、様々な活動の話を聞くことが出来、非常に有意義な会だった。

 特に、シンポジウムで話された炭谷さんの社会的事業所の話は、今後のセンター21やくまのベイカーズの活動に、何らかの形で活かしていきたいと思わされた。

 PGSJとの共同事業も、社会的事業所としての側面があるが、今後についてはさらにその機能を強化し、ソーシャルインクルージョンのために寄与できる事業体としていきたい。

 今回(こんかい)の大会(たいかい)で得た(えた)情報(じょうほう)や、人(ひと)とのつながり、大会(たいかい)を通じて(つうじて)考えた(かんがえた)ことを、センタ(せんた)ー21で行っている活動(かつどう)と照(て)らし合わせて(あわせて)見直しをし、さらに今後の活動に是非活かしていきたいと思う。

くまのベイカーズ 竹内善太